見えない存在に守られて
四神という思想と、美命の器
美命では、その方の生年月日から導かれる守護神を器に描くことがあります。
守護神という言葉はどこか神秘的に聞こえるかもしれませんが、その背景には、古代中国から続く東洋思想があります。
そのひとつが「陰陽五行説」です。
これは、世界のあらゆるものは
木・火・土・金・水
という五つの要素の巡りによって成り立っているという考え方です。
この思想は、自然現象や暦、医学、建築、都市計画など、さまざまな分野に影響を与えてきました。
その中で生まれた象徴が、四つの神獣――
青龍・朱雀・白虎・玄武 です。

四神という宇宙の象徴
古代中国では、夜空の星の配置を観測する中で、天空は四つの領域に分けられ、それぞれに象徴となる存在が与えられました。
それが四神です。
- 東を守る 青龍
- 南を守る 朱雀
- 西を守る 白虎
- 北を守る 玄武
これらは単なる神話の存在ではなく、方位、季節、色、そして五行の思想と結びついています。
たとえば、
青龍は東・春・木、
朱雀は南・夏・火、
白虎は西・秋・金、
玄武は北・冬・水
を象徴します。
つまり四神とは、宇宙の秩序や自然の循環を表す象徴でもあったのです。
なぜ「架空の動物」だったのか
ここでひとつ興味深い疑問がわいてきます。
なぜ古代の人々は、龍や朱雀、白虎といった架空の動物を象徴として選んだのでしょうか。
これについては、実ははっきりとした一つの答えが残っているわけではありません。
ただ、研究者の多くは、自然の力や宇宙の秩序といった人間の理解を超えるものを表現するためには、現実の動物ではなく、神話的な存在の方がふさわしかったのではないかと考えています。
龍は水や雲を呼び、
朱雀は火と再生を象徴し、
白虎は勇気と守護を表し、
玄武は長寿と静けさを象徴します。
それぞれが自然の力や季節の循環を象徴する存在として、人々の想像力の中で形作られていったのでしょう。
つまり四神とは、古代の人々が宇宙の秩序を理解しようとして生み出した象徴的な言語でもあったのではないかと思います。
日本に伝わった四神
この思想はやがて日本にも伝わりました。
奈良・平安の時代には、都を守る方位の神として四神が重要視されるようになります。
よく知られているのが平安京です。
京都の東には青龍を象徴する鴨川、西には白虎に対応する山陰道、南には朱雀大路、北には玄武に対応する船岡山があると言われ、都は四神に守られる形で造られました。
同じ考え方は江戸の都市計画などにも影響を与え、日本のまちづくりの思想の中に、いまも息づいています。
また、日本で四神の姿を具体的に見ることができるものとして、奈良のキトラ古墳の壁画がよく知られています。
そこには、東西南北を守る四神が鮮やかに描かれており、古代の人々がこの思想を大切にしていたことを伝えています。
器に描く、自分の守護神
私が美命を始めたのは2005年、今から20年前のことです。
実はその頃から、四神を器に描いてきました。なぜなら、お茶やコーヒーを飲むとき、自分の守護神が描かれた器を手にすると、なんとなく心が落ち着いたり、少し嬉しい気持ちになる感覚は誰にもあるのではないか。
さらに、この器が、長く大切にされる存在であってほしいという願いも理由のひとつでした。
いまは、たくさんのものが簡単に手に入り、簡単に捨てられてしまう時代です。けれど、もしそこに
「自分を守ってくれる存在」が描かれていたら、きっとその器は、簡単には手放せないものになるのではないかと思ったからです。

器の中の、小さな祈り
器は単なる道具ではありません。
日々の暮らしの中で、何度も手に取るものです。だからこそ、その器がほんの少しでも心を落ち着かせてくれる存在であればと思います。
守護神という小さな存在が、毎日の暮らしの中で、そっと寄り添う。そんな器を作り続けていきたいと思っています。
器は祈りの道具でもあるのですから。

